治療家として40年間患者さんの足を診てきました。その結果、成人女性の約80%以上に『
外反母趾』や『
浮き指(指上げ足)』『
扁平足』など足裏の異常が見られます。そして、このような人たちのほとんどに、腰痛や肩コリがあったり、首を痛めたことによる自律神経失調状態があったり、下半身の筋肉が異様に発達していたり、また下半身にだけ脂肪がつきすぎていたり、まさに
足裏の異常は健康や美の大敵なのです。この関係に早く気付くことです。まず、自分の悪い足に気付いてないということが原因なのです。
それは、
1.見本となる正常な足と比較する機会がなく、比べようがないため
2.自分の足が醜い・悪いということを認めたくないという心理が働くため
3.『たかが足』『足ぐらい』という軽い気持ちで片付ける傾向があるため
では足裏の異常とは一体どのようなものでしょうか?

外反母趾は、親指が小指側に曲がっているので注意してみれば分かりやすく、また今では世間の認知度も高いので理解しやすいと思います。
しかし、もうひとつの
『浮き指(指上げ足)』は、上から見ると指は真っ直ぐなので異常にきづかないのです。チェックする方法は、
足指の力を完全に抜いた状態で、手で足の親指を甲側へ限界まで押して90度以上反るかどうかで見分けます。浮き指(指上げ足)は指の踏ん張りがきかないので、『指の付け根』と『かかと』で歩くような”
かかと重心”で、”
2点歩行”になってしまいます。
一部の医師や、また新聞記事で取り上げられていますが、まだ医療機関や一般の方にも浸透していないので危機感を覚えないのです。しかし、現実は、この「浮き指」が子どもから大人まで激増しているのです。

『外反母趾』『浮き指(指上げ足)』『扁平足』などの足裏の異常は、横アーチを支えている靭帯(スジ)が次第にのびてしまうので、横アーチが本来の形とは逆の船底型にゆるんでしまいます。そうなると、益々指が踏ん張れず、指の付け根を打ち付けて歩く「悪い2点歩行」を促進させる要因となっています。そういう方は、きまって
「指の背」や「指の付け根」に分厚いタコができています。

このような不安定な足裏を土台として日々生活していると、左右でバランスが異なるために身体にゆがみが生じたり、地面からの過剰な衝撃を吸収できないため、ひざ・腰・首に伝えて骨を変形させてしまいます。また、足裏の不安定を支えるために、
下半身に必要以上の力や脂肪を蓄えてなかなか落ちない下半身太りに陥ったりと私たちの身体に悪影響を及ぼすのです。
ではなぜ、「外反母趾」「浮き指」「扁平足」など足裏の異常になってしまうのでしょうか?
それは、生まれて間もない頃から靴下や靴の生活をしてきた現代人には、足裏に十分な刺激を受ける機会もなく、『
指を踏ん張って重力とのバランスをコントロールする』という本来の足裏の機能が発達しにくかったからです。更に、それを増長するように、小学校の頃は足が靴の中で遊んでしまうような大きめのスニーカー、かかとを踏んづけてつま先を浮かせて履く上履き、社会に出るとヒールやパンプス、今流行りのつっかけタイプのサンダルなどに弱った足が合わされてしまったのです。これが、二次的要因となって大切な足裏のアーチを消失傾向にさせ”指のつけ根”と”かかと”の「
悪い2点歩行」にしてしまいました。それを長年無意識のうちに繰り返していることで、身体の様々な不調や悩みが生まれるのです。
しかし、
『足(人間の土台)から上部を診る』という考えが多くの人にないため、体の不調や美の悩みにおいても、その部分だけをみて、足には目がいかないのです。足への関心が薄い、このことが問題なのです。
そんな遠回りをすることなく、答えは「
足裏バランス」にあります。
なぜなら、人間は重力とのバランス(調和)を効率的に保つことを第一優先にしているのです。絶対的重力の支配下で暮らす人間である以上、その重力とのバランス(調和)を最も多くコントロールしているところが『
足裏』なのですから、人間の土台となる足裏から健康や美、そして予防を考えていくことがごく自然なことなのです。